住まい・暮らしのリフォームコラム

メーカー&職人インタビュー 【Vol.04】

美しく彩りながら保護する
住まいを長持ちさせるための外壁塗装.part3 

2018年2月12日

前回に引き続き、住宅塗装全般を手掛ける“塗装のプロ”、プログレペイント代表で塗装職人でもある高橋寛之さんと、リフォームのタケウチマネージャーさんによる「外壁塗装の対談」をご紹介させていただきます。
<前回のお話しはこちらから>

化粧を施すように塗り重ねる

高圧洗浄機で汚れや苔を取り除きます。

タケウチマネージャー(以下Oさん)塗料の種類、色決めと話してきましたが、工程についても教えていただけますか?具体的に塗装には、どのような工程があるのでしょうか。

高橋さんはい。足場を組んだら、まずは高圧洗浄をかけます。水道水ですが、車の洗車機よりやや強いぐらいの水圧をかけて、壁についた埃やチョーキングした粉を取り除きます。実はこれがとても大切なプロセスです。汚れが残ってしまうと後の仕上がりに影響が出ますので。

塗料を塗る前に、透明、もしくは乳白色の下塗り材を塗ります。

高橋さんその後に下塗り。シーラー、プライマー、サーフなどさまざまありますが、主流になっているサイディングの壁については、シーラーを使うことが多いですね。透明のものが多いのですが、わかりやすいように乳白色のものを使うこともあります。

Oさん塗料と下地の間に入れる接着剤のようなものですね。

高橋さんそうですね。傷んだ壁面に塗料を直接塗ると塗料を吸い込みすぎてしまいますし、密着性が悪くなって耐久性が落ちたり、艶ありの塗料なのに艶が出なかったりします。

Oさん女性の方はお化粧をイメージすると分かりやすいかもしれません。ファンデーションを直接塗るのではなく、最初に洗顔をして、下地を塗って……という感じでしょうか(笑)。

高橋さんまさにそうですね。その後上塗りをしますが、メインとなる塗料を通常は2回塗ります。そのそれぞれを分けて、中塗りと上塗りと呼ぶこともあります。1回塗りだと、塗り残しがあったり、下塗りしたシーラーがちょっと見えてしまったりということが起こりうるのですが、2度塗りをすることで、そうしたこともなくなります。

 

ローラーや刷毛を使った繊細な手作業

Oさん塗り方もいろいろとありますよね。

高橋さん基本的には、ローラー、刷毛、吹き付けの3つの塗り方があります。
まず、吹き付けは、広範囲を素早く塗れるのですが、飛び散りが多いことと、機械の設置スペースを要すること、音が出ることがネックになっていまして。近隣トラブルの原因にもなりかねないことから、住宅密集地ではあまり使用しません。

 

外壁や屋根塗装で最もよく使うのはローラーです。種類がたくさんあって、いくつかサンプルをお持ちしましたが、塗る面積にあわせてサイズを選ぶのと、あとは毛足の長さですね。毛足が長いものは、細かなところにも入り込んでいくので凹凸があるところにもおすすめです。逆に短いものは、フラットなところで密着よく塗れます。

Oさん一般的な戸建て住宅一軒で、何本ぐらい使うものなんですか?

高橋さん面積によりますが、下塗り、中塗り、上塗りそれぞれ2本で6本ぐらいでしょうか。
プラスアルファで使うのが刷毛です。外壁、屋根では、ローラーで塗りきれないところで補助的に使うのと、鉄部・木部の細かい部分を塗る時にも使います。

Oさん想像以上に繊細な作業ですね。ほかに、職人さんの腕が試されるといえば、溶剤の扱いがありますよね。

 

高橋さんそうですね。簡単に説明すると、塗料には溶剤の違いで水性塗料と油性塗料があって、水性は価格が安く、臭いが弱くて環境にも良いのですが耐久性や密着性で劣ります。油性は価格が高く、臭気も強いのですが、しっかりついて長持ちします。
それぞれに、そのまま使えて自然乾燥で固める1液型と、主剤と硬化剤を混ぜて使用し、硬化剤の効果で固める2液型があり、2液型は、混ぜるとその日のうちに使い切る必要があります 。

Oさんこちらもまた、髪用のカラーリング剤みたいですね。

高橋さんはい。職人は、外壁塗装では油性の2液型を使うことが多いのですが、練り混ぜる割合、混ぜ方の加減で仕上がりが変わり、最悪の場合硬化不良を起こすこともありえます。まさに腕が試されるところですね。

それと、現場の状況を見て、水性なのか油性なのか、1液型なのか2液型なのか、適切な判断をするというのもまた、職人の技と言えます。例えば、元の塗料が水性だった場合に、2液型の油性塗料を使うことで下地を侵してしまい、剥離を悪化させてしまう場合があるので、注意が必要です。それに、油性はやはり臭いが強いので、近隣からの苦情が出ないように水性に切り替えることもあります。

Oさん技術と知識を兼ね揃えた職人さんの力ですね。

― 外壁の塗装が、まるで女性のお化粧のような工程を経て施されているんですね。意外な発想で驚きました。また水性・油性、1液型・2液型の取り扱いや、塗布する箇所の状況を見極めるのも、職人技といえますね。

次回は最終回になります。外壁塗装を考える時期や耐久性について詳しく聞いていきますのでお楽しみに。