住まい・暮らしのリフォームコラム

メーカー&職人インタビュー 【Vol.11】

愛着ある我が家に 長く安全に住むための耐震リフォーム

2020年7月3日

安心・安全・健康・快適という視点で住宅はもちろん、公共・商業施設にも高機能な建材を提供する大建工業株式会社。多数ある主要製品の中でも、耐震リモデルに適した製品「かべ大将」は、耐震対策リフォーム工事に欠かせない建材です。そうした製品の販売促進に携わる升井 博之さんに、「これからの耐震リフォーム」について、リフォームのTAKEUCHIの耐震診断士NさんとリフォームエンジニアTさんが、話を聞いてきました。 ※当取材は、2019年2月に取材したものです。

1.耐震診断のすすめ

―東京新宿にある、DAIKENショールーム。床材や壁材、天井材、室内扉や収納、階段、音響製品など、住まいづくりに欠かせない建築資材がずらりと並び、普段目にすることのない耐震建材も、実物を見てさわって体感できるショールームです。今回は実際に製品を見学しながら、お話をうかがってきました。

セルフチェックから始める耐震診断

リフォームのTAKEUCHIのリフォームエンジニアTさん

タケウチリフォームエンジニアTさん(以下Tさん)お客さまからよくいただくのが、「地震が来たとき我が家が倒壊しないか心配ではあるけれど、どんな対策があるのか?」という質問です。今日はこれにお答えできるようにお話を進めたいと思うのですが、前提として、耐震リフォームをご依頼になるお客さまの多くは、「工事をするからには絶対壊れない! ぐらいまで完璧になるんでしょう?」というご期待をお持ちだと感じます。

 

 

DAIKEN工業株式会社、国内事業本部 国内販売推進課(当時)、升井さん

大建工業株式会社 升井さん(以下升井さん)確かにそうですね。耐震リフォームって、踏み切るのが大変なだけに期待値も高くなるのかな、と思いますね。しかし、そもそも耐震の考え方は「命を守る」というところでスタートしているもので、国が示す規準も、「震度6強の地震が来ても倒壊しない」「建物の中にいる人が生存する」ことを目指すものです。あくまでも「最低の基準」を示すものなのですよね。

 

 

リフォームのTAKEUCHIの耐震診断士Nさん

タケウチ耐震診断士Nさん(以下Nさん)耐震基準というのは、建築基準法に定められる設計基準ですが、1981年に強化され今の規準(新耐震基準)になっています。それ以前の基準(旧耐震基準)によって、つまり1981年(昭和56年)以前に建てられた建物では特に注意が必要です。

国は、今年2020年までに、住宅や公共施設等の耐震化率を少なくとも95パーセント、2025年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消することを目標としてますが、なかなか進んでいないのが現状のようです。出典:国土交通省HP「住宅・建築物の耐震化について」

 

升井さんとはいえ、「我が家は大丈夫?」と考えたときに、まったくわからないですよね。耐震性について家の築年数は1つの目安になりますが、国土交通省住宅局が監修し、一般財団法人日本建築防災協会が出しているもので、「誰でもできる我が家の耐震診断」というものもあり、おすすめです。

建てたのがいつ頃かとか、増築の有無など、簡単な10問の設問に答えるセルフチェック方式の耐震診断ですが、こうしたサービスを使って、まずは自分の家の状況を把握することから始めるのがいいですね。

気になるところが出てきたら、プロの診断に頼む。TAKEUCHIさんのようなリフォーム会社さんだけでなく、自治体によっては診断窓口を設けているところもあります。

 

家の劣化を防いで耐震性能を持続させる

Tさん耐震診断には「一般診断」と「精密診断」があり、内装を剥がして筋交の有無や基礎を詳細に調べていく場合もあれば、図面のみで判断する場合などさまざまです。ただ、いずれの場合も診断の結果は数値で表し、評点で4段階に判定します。図のように、診断結果が1.0に満たない家は対策が必要ということとなります。

Nさん図面で判断する場合であっても、基本的には現地調査が必要です。図面どおりに造られているとは限りませんし、診断に必要な劣化度の調査は実際に見ないとできませんので。例えば、内装が剥がれてきている、床がきしむ、建具の締まりが悪い、浴槽タイルがひび割れている……、こうしたものを現地で見ていきます。室内、天井だけでなく、床下や外部も調べます。外壁にヒビが入っていないか、塗装で白化現象が起こっていないか、木部が腐っていないか……。こうしたいわゆる劣化は、地震時には家屋倒壊の引き金になりかねない危険性をはらんでいます。

升井さん1995年の阪神・淡路大震災では、6400名以上の方がお亡くなりになっているんですが、その83.3%が建物倒壊が原因となった犠牲者です。倒壊した建物の多くは、 81年以前に建てられた古い木造家屋でした。

地震で古い木造家屋が倒壊する主な原因は、壁と構造材の劣化にあります。特に湿気の多い日本では、壁や柱が腐りやすいんですね。それともう一つ、家屋の基礎と言うべき構造材が、シロアリ被害で耐力としての機能を失ってしまっていたということも起こりがちです。

Tさん木が、シロアリの餌になってしまうということですね。

耐力面材ダイライトMSは、鉄鉱スラグを原料にしたロックウール(鉱物繊維)で火山性ガラス質材料(シラス)を挟むようにして作られている複層板。未利用資源を有効活用したエコロジー素材でもある。創業以来、地球環境に配慮し、未利用資源の有効活用を図った製品をつくりつづけてきた大建工業のDNAが多分に含まれた商品。

升井さん弊社の外壁下地材用の耐力面材に「ダイライトMS」という製品がありますが、木以外の素材から作った無機質系素材です。透湿性が高く、腐りにくく、シロアリが食料とする成分を含まないことから、年数を経ても耐震性能を維持できます。1996年に販売を開始し、これまでに90万世帯(2020年3月末推定値)に導入いただきました。私たちは建材のメーカーという立場ですので、こうした地震に強い建材の開発・提供をすることで、地震で倒れない強い家づくりを支えるお手伝いを続けていきたいと考えています。

―耐震への不安があっても、「何から始めればいいのか分からない…」という方が多いと思います。まずは、気軽にできるセルフチェックとプロへの相談が第一歩のようですね。 このお話は、リフォーム体験談【コラムVol.11 part2】に続きます。お楽しみに!

 

リフォームコラム 【Vol.11 part2】は、2020年7月10日頃に更新予定です。